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【雑記】トランプ大統領の医薬品価格引き下げ政策について

トランプ大統領の医薬品価格引き下げ政策

この記事では、2025年4月15日と5月11日(5月12日署名)のトランプ大統領の医薬品価格引き下げ政策を詳細に比較し、今後の影響について分析します。2025年5月12日14:00 JST時点の情報に基づき、信頼できる情報源を使用して検証を行いました。

1. 4月15日の大統領令の詳細

2025年4月15日に署名された「Lowering Drug Prices by Once Again Putting Americans First」は、国内の医療システムを強化し、特にMedicare利用者の薬価を引き下げることを目指します。以下の内容が含まれます(White House):

  • Medicareの薬価交渉プログラムの改善: 初年度22%超の節約を目指し、2028年以降の交渉に透明性とイノベーションを重視するガイドラインを提案(60日以内)。
  • 病院の薬購入コスト調整: 病院の実際の薬購入コストに基づくMedicareの支払いを調整し、最大35%の削減を見込む(180日以内)。
  • 支払い標準化: 特定の薬(例:がん治療)の支払いを、患者がケアを受ける場所に関係なく標準化し、最大60%の削減を目指す(1年以内)。
  • 低所得者向け割引: Public Health Service Actに基づき、340Bプログラムを通じて低所得者向けにインスリンやエピネフリンを割引価格で提供(90日以内)。
  • PBMの透明性向上: 雇用主向けのPBM手数料開示を改善し、競争を促進(180日以内)。
  • 競争促進: ジェネリック薬やバイオシミラーの承認プロセスを加速し、OTC転換を促進(180日以内)。
  • 薬輸入の促進: 外国からの薬輸入プログラムを安全性を保ちながら簡素化(90日以内)。

この政策は、国内の医療システム内のコスト削減と競争促進に焦点を当て、段階的な価格引き下げを目指します。製薬業界からは、R&Dへの影響を懸念する声が上がっています(PhRMA)。

2. 5月11日の発表と5月12日の大統領令の詳細

2025年5月11日に発表され、5月12日に署名された大統領令は、「Most Favored Nation(MFN)」政策を再実施し、国際価格に基づく薬価引き下げを目指します。以下の情報源から内容をまとめました(CNNReutersThe New York Times):

  • 内容: 米国が他の国々が支払う薬価の最低額と同額を支払うことで、薬価を30%~80%削減。
  • 対象: 具体的な薬や保険プログラムは明記されていませんが、Medicareが含まれる可能性が高い。過去の試み(2020年)はMedicare Part Bの50種類の薬に適用され、860億ドルの節約が見込まれました。
  • 背景: 2020年に同様の政策が提案され、連邦裁判所によってブロックされ、2021年にバイデン政権で取り消されました。
  • 業界反応: 製薬業界(PhRMA)は、「政府による価格設定は患者に悪影響を及ぼす」と強く反対しており、中国への依存増加やMedicare削減を懸念しています(CNN)。
  • 法的リスク: 過去の経緯から、再度裁判所での争いが予想されます。Raymond JamesのアナリストChris Meekinsは、実施が困難と予測しています。

3. 両者の比較

以下の表で、両政策の違いを詳細に比較します:

項目4月15日の大統領令5月12日の大統領令
署名日2025年4月15日2025年5月12日
主な焦点国内改革(Medicare、PBM、透明性向上)国際価格との連動(MFN政策)
対象Medicare、Medicaid、国内医療システム特定の薬(不明確)、Medicareが含まれる可能性
削減目標段階的(例:初年度22%超、特定薬60億ドル節約)即時的(30%~80%削減、過去試算で860億ドル節約見込み)
アプローチ既存プログラムの改善と新規規制の導入国際価格基準の採用
実施可能性既存法に準拠、比較的スムーズに進む可能性過去に裁判所でブロックされた経緯あり、法的挑戦の可能性
業界反応R&Dへの影響を懸念(PhRMA)強い反対(中国依存、Medicare削減の懸念)
患者への影響段階的な負担軽減、競争促進による長期効果即時の大幅削減可能だが、供給不足やアクセス制限のリスク
経済的影響国内競争促進、透明性向上による持続可能な価格引き下げ大幅な節約可能だが、R&D投資減少や市場混乱の可能性

4. 今後の影響の分析

  • 価格引き下げの可能性:
    • 4月15日の政策: Medicareの薬価交渉や支払い調整により、段階的な価格引き下げが実現する可能性があります。初年度の22%超の節約は、特定の薬(例:最初の10薬品)で60億ドルの節約を見込んでいます(CMS)。しかし、即時の大幅な削減は期待できません。
    • 5月12日の政策: もし法的挑戦を乗り越えれば、30%~80%の価格引き下げが実現し、過去の試算(860億ドル節約)に基づけば大きな影響があります。しかし、過去のMFN政策が裁判所でブロックされた経緯から、実施までの道のりは険しいです。
  • 製薬業界への影響:
    • 両政策とも、製薬業界の利益を圧迫する可能性があります。特に5月12日の政策は、国際価格との連動により米国市場での収益が大幅に減少する恐れがあります。PhRMAは、R&D投資の減少や新薬開発の遅延を懸念しており、中国への依存増加も指摘されています(CNN)。
  • 患者への影響:
    • 短期的には: 5月12日の政策が実現すれば、患者負担が大幅に軽減される可能性があります。しかし、価格が低すぎると薬の供給不足やアクセス制限が発生するリスクがあります(The New York Times)。
    • 長期的には: 4月15日の政策が国内の競争を促進し、持続可能な価格引き下げを実現する可能性があります。
  • 法的・政治的リスク:
    • 5月12日の政策は、過去の経緯(2020年のMFN政策が裁判所でブロック)から、再度法的争いに発展する可能性が高いです。一方、4月15日の政策は既存法に沿った内容が多く、実施が比較的スムーズに進む可能性が高いです(Reuters)。

5. 結論

トランプ大統領の2つの大統領令は、米国の医薬品価格引き下げを目指すものですが、アプローチが異なります。4月15日の大統領令は国内改革に焦点を当て、段階的な価格引き下げを目指す一方、5月12日の大統領令は国際価格との連動を提案し、大幅な即時削減を目指します。

  • 4月15日の政策は、既存のMedicare改革を強化し、透明性と競争を促進する点で現実的ですが、効果は時間を要します。
  • 5月12日の政策は、革新的ですが、法的および業界からの反発が予想され、実施までの道のりは険しいです。

今後の影響は、両政策の実行可能性と法的・政治的障壁に大きく依存します。患者にとっては価格引き下げが歓迎されますが、製薬業界の反応や新薬開発への影響も無視できません。米国国民の医療費負担軽減に向けた取り組みは続きますが、その成功はこれらの政策のバランスと調整にかかっています。

主要引用文献